制約と創造性|再現性が高いアイデアを出すコツと遊び心について

創造

2025.04.29

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私はクリエイティブ業界、デザインや振付などを仕事としているのですがアイデアが全然出てこなくて苦労した経験があります。そんな時によくやるのが制約を理解してまずは最適解を出す、ということです。

制約を意識し始めてからアイデアが出やすくなったと感じていて、モノづくりをする時にまず意識しているポイントです。“アーティスト”であれば制約なんて考えなくても良いかと思いますが、仕事として何かを作るときは制約を意識すると答えを出しやすいと考えています。

そして最適解を出すだけではなくそこに個人の感性や直感的な何かを加えることによってより面白いアイデアが生まれやすくなると思っています。デザイナーであり振付師である私が制約と創造性、アイデアの出し方についてご紹介します。

  1. 自由度が高い=アイデアが出やすいとは限らない
  2. 制約とデザイン
  3. 制約の中で機能する最適解+αの何か

1. 自由度が高い=的確なアイデアが出やすいとは限らない

制約がない方が自由度という観点から見ると、間違いなく創造性は高いと思います。ブレストのように自由にアイデアを出す場面では非常に有効です。しかしそれでは無限にアイデアが出てしまうし収集がつかなくなってしまうケースもあります。

例えば「なんでも良いから作ってください。」と言われると果たして何を作らなくてはいけないだろう?となります。制約が無く自由度が高過ぎるために決定の基準がないのです。(それはそれで楽しそうですが)

しかし、「物理的に存在する椅子を予算1万円で、2週間で作ってください」と言われると何をすれば良いのかイメージしやすくなります。このケースの場合は物理的制約、金額的制約、期間的制約がかかってきています。また、作り手が椅子作りのプロフェッショナルでない場合は技術的制約もかかってきます。

そうなると作れるものは非常に限られてくるわけですが、この制約があることによってクリエイティビティを最大限に発揮することもまた可能になるのです。技術力が無くて単純な椅子のクオリティでは勝負できないのであれば、予算内で風船をたくさん付けて派手にしようとか、ローラーを取り付けて人力で走れるようにするとかも面白いかもしれません。

制約の中で戦略を立てたり、枠の中での最適解を見つけることに繋がるのです。この制約を最初に定めておいて理解することで、実現不可能な提案をしてしまう心配もなくなるし、限られたリソースを効率よく使うことができます。

2. 制約とデザイン

私たちの周りにはデザインに囲まれています。そしてそのデザインにも制約が大きく関係しています。例えば街でよく見かけるポスターやチラシも芸術的観点から見た時に一見自由度が高そうに見えますが、限られた枠の中で必要な情報を収めなくてはならないという制約があります。

家電などのプロダクトデザインなどでも一緒で、限られた大きさでその中に納めるシステムや機械、機能性やターゲットユーザーへの使いやすさ、その開発費や販売価格や技術者の人件費まで全て逆算して開発する必要があります。そしてその全てがある意味”制約”として存在していると考えています。

振付や舞台構成を考えるときも、人数的制約、スキル的制約などを意識するとよりスムーズに考えがまとまることが多いです。こういうのがやりたいという明確なイメージがあったとしても実際に作ってみるとイメージと違うということも結構あるものです。それはそもそも人数が足りなかったりスキルが足りなかったりすることもあるからです。ダンサーの誰もがプロ目指して本気で踊っているとは限らないので、個人の温度感やセンス、個性を活かして、今の人数やスキルでできる最高のものを創造する意識をしています。

私は踊りやインストラクターは好きでやっているので金銭的な制約は最低限気にする程度で、どちらかというと自分がやりたいこと、舞台芸術やアート的な比率の方が多いかもしれませんがデザイン的な要素と制約を組み合わせることでより高いクオリティの作品を提供できると信じています。

もちろんどんなクリエイティブやデザインでもアート的な要素もありますし、意図があってあえて取り入れるなら適切かもしれませんし、その調和がとても重要だということも理解しています。しかし制約を意識することによってより解像度の高く実現性が高いプロダクトや作品が出来上がると思っています。

3. 制約の中で機能する最適解+αの何か

自由な発想を持つことはとても大切です。ありたい姿や理想像をイメージできればそれは必ず実現できると言ってくる人も多いでしょう。しかし現実的な話、そううまくはいかないケースが大半を占めています。

仕事でも人生でもそうですが、論理が抜け落ちていては実現性や説得力が欠けてしまいます。どれだけ渾身の熱いアイデアを語ったとしてもそこに理がないとふーんで終わってしまうのです。なので制約の中で機能する最適解を見つけて、そこに遊びを加えるくらいがちょうど良いのかなと思っています。自由に発想した後に現実性の高いところまで削ぎ落としていくというのも良いかもしれません。

たまに天才みたいな人が渾身のアイデアと情熱だけで突き進んでいくというケースもありますが、それは一握りの少数派です。私を含む一般人は少なからずロジカルに考える必要があります。

どちらにしろ両方大事なのです。ただ制約の中で最適解を見つけるだけなら面白くないしAIにだってできる。自分のアート的感覚を渾身に語ったとしてもうまく伝わらずにスルーされてしまう。なので制約の中で機能する最適解+αの何かというのがとても現実的かつ今っぽいのではと感じています。

その+αの何かにセンスが出ると思っていてその人の人生観や直感、歴史に大きく左右される要素だと思います。例えば音楽の知識やアートの知識、スポーツの経験や、成功経験や挫折経験とかかもしれません。とても抽象的ですがその要素が現実的かつ面白みのあるクリエイティブに繋がるのではないかと思っています。

まとめ

制約を意識することによって現実的かつ論理的な最適解を出しつつ、そこに独創性や個人の感性を加えることができれば、クリエイターとしてさらに価値のあるものを作り出せる可能性が上がるのではないかという話をしてきました。

役に立つもの、機能するものを作るのはデザイナーとして最低限解決しなくてはいけない問題です。しかしそれだけではこれからの時代は厳しいと思っています。逆に役に立たないけど意味があるアート的な感性はアーティストとして絶対必要です。でもよほどの才能がない限り埋もれてしまい実現性に欠けてしまいます。両方のバランスを見ながら調整していくスキルが必要なのではないかと日々思っています。

アートとデザインの自分の価値観に関しては以下の記事で説明しています。

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(筆者)

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Ukyomas

Webデザイナー、振り付け師、ミニマリスト。人生の余白を作り、個人がストレス無く生活して自由に創造できる未来を目指している。

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